脳のデフォルトモードが持つ時空間構造を統計的に検証

2022年02月17日

岡 山 大 学
慶應義塾大学
株式会社アラヤ

◆発表のポイント

  • 脳は何もしていない安静状態でも活発に活動をしています(脳のデフォルトモード)。
  • 今回、統計的モデリングにより、脳のデフォルトモードについての定説が間違いである可能性が分かりました。
  • 研究が進むことで、認知症や精神疾患の新しい診断手法の開発に繋がることが期待されます。
 岡山大学学術研究院自然科学学域(理・生物)の松井鉄平准教授と生理学研究所のトラン・ファム(Trung Quang Pham)特任助教、慶應義塾大学(理工学部)の地村弘二准教授、株式会社アラヤの近添淳一主任研究員の共同研究グループは、脳活動の統計的モデリングを用いて、脳のデフォルトモードについて広く信じられている説を覆す発見をしました。
 これらの研究成果は4月1日、米国の神経科学雑誌「Neuroimage」のResearch Articleとして掲載予定です(オンライン版では掲載済)。
 ヒトの脳は、何もしていない時でも活発な活動を示しており、脳のデフォルトモードと呼ばれています。今回の研究では、脳のデフォルトモードの解析に広く利用されている手法を統計的モデリングによって検証し、その問題点を発見しました。その結果、脳のデフォルト状態が複数の安定状態から構成されているという、広く信じられている説が間違いである可能性が明らかになりました。
 本研究成果は、認知症や精神神経疾患の診断に脳のデフォルトモードを応用するための重要な起点となることが期待されます。


図1. 脳のデフォルトモード。吹き出しは機能的MRIで計測した脳活動のスナップショット。定説では、デフォルトモードでは脳は複数の安定状態を遷移する。対立仮説では、見かけの異なる脳活動のパターンは、実際には一つの状態から生まれる。今回の研究では対立仮説の方が正しい可能性が示唆された。

◆研究者からのひとこと
「人間は脳の10%しか使っていない」という都市伝説もありますが、実際の私たちの脳は、何もしていない時でも100%に近いくらい活発に活動しています。将来は、このような脳のデフォルトモードの活動をスキャナーで読み取ることで、健康状態だけでなく、その人の知能まで分かってしまうようになるかもしれません。
松井准教授

■論文情報
論文名: On co-activation pattern analysis and non-stationarity of resting brain activity
掲載誌:Neuroimage
著者:Teppei Matsui, Trung Quang Pham, Koji Jimura, Junichi Chikazoe
DOI:
https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2022.118904

URL:
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1053811922000349

<詳しい研究内容について> 脳のデフォルトモードが持つ時空間構造を統計的に検証

<お問い合わせ>
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岡山大学学術研究院自然科学学域(理・生物)
准教授 松井 鉄平
(電話番号)086-251-7860

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