バイオベース高分子を殻材とする蓄熱マイクロカプセルの高速生産

2022年02月17日

岡 山 大 学
中国精油株式会社

◆発表のポイント

  • マイクロ流路と呼ばれる細い流路に原料液を送液し、混合するだけで潜熱蓄熱材を内包したバイオベース高分子マイクロカプセルを高速連続製造する技術を開発しました。
  • 本製造技術で得られた50−100 μm程度のバイオベース高分子マイクロカプセルは、過冷却を起こさず、優れた蓄熱性能を示すことが確認されました。
  • この環境低負荷な蓄熱マイクロカプセルを建築建材や保温容器に導入することによって、未利用熱を有効活用でき、省エネルギーに繋がるものと期待します。
 岡山大学学術研究院自然科学学域(工)の渡邉貴一研究准教授、小野努教授と同大学院自然科学研究科博士前期課程の坂井優子大学院生は、中国精油株式会社と共同でマイクロ流路を用いたバイオベース高分子を殻材とする蓄熱マイクロカプセルの高速生産技術を開発し、その蓄熱特性を評価しました。本研究成果は1月26日、アメリカ化学会の「ACS Materials Au」誌に公開されました。
 物質が液体−固体に相変化する際に生じる熱を吸収・放熱する材料を潜熱蓄熱材と言います。これまで、蓄熱材を高分子殻材で包むカプセル化技術は、蓄熱材の周囲環境への漏出を防ぐために多く開発されてきましたが、合成高分子を殻材として有害なホルマリンを用いる場合や、数時間の重合反応を要する手法でした。本研究では、原料液をマイクロ流路に送液するだけの簡便な方法によって、バイオベース高分子を殻材とするホルマリンフリーの蓄熱マイクロカプセルを連続的に製造できるようになりました。今後、本材料を建材や保温容器に導入し、冷暖房の代替とすることによって電力消費を削減でき、省エネルギーに繋がることが期待されます。


図1. 脳のデフォルトモード。吹き出しは機能的MRIで計測した脳活動のスナップショット。定説では、デフォルトモードでは脳は複数の安定状態を遷移する。対立仮説では、見かけの異なる脳活動のパターンは、実際には一つの状態から生まれる。今回の研究では対立仮説の方が正しい可能性が示唆された。


図2. マイクロ流体を用いたバイオベース高分子を殻材とする蓄熱マイクロカプセルの調製


図3. (a)マイクロ流路を用いた液滴調製時の顕微鏡写真, (b)得られた蓄熱マイクロカプセルの光学顕微鏡写真, (c) 示差走査熱量計を用いた蓄熱マイクロカプセルの蓄熱測定結果(蓄熱材としてヘキサデカンを使用)

◆研究者からのひとこと
これまでのパラフィン系蓄熱カプセルの原料や製造工程を見直し、産学共同でバイオベース材料のみでホルマリンも用いず従来と同等性能の蓄熱カプセル調製を実現しました。本手法ではさらにサイズを揃えて製造できることから、より高い付加価値の提供も期待できます。
小野教授

■論文情報
論文名: Microfluidic Production of Monodisperse Biopolymer Microcapsules for Latent Heat Storage
掲載誌:ACS Materials Au
著者:Takaichi Watanabe, Yuko Sakai, Naomi Sugimori, Toshinori Ikeda, Masayuki Monzen, and Tsutomu Ono
DOI:10.1021/acsmaterialsau.1c00068
URL:
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsmaterialsau.1c00068

<詳しい研究内容について>
バイオベース高分子を殻材とする蓄熱マイクロカプセルの高速生産

<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院 自然科学学域
教授 小野 努
(電話番号)086-251-8083
(FAX)086-251-8083

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