トピック

不純物散乱に強い新超伝導の発見

◆発表のポイント

  • 「重い電子系」と呼ばれる物質群は、特定の電子が①局在し磁性を示す、②遍歴して「重い電子」超伝導となる、という二面性を持ちます。重い電子が生まれる過程(局在-遍歴転移)は超伝導研究において有用と考えられていますが、これまでその観測には成功していませんでした。
  • 重い電子系化合物CeRh0.5Ir0.5In5において局在-遍歴転移の様子を突き止め、さらにこの転移によって不純物散乱に強い超伝導が出現することを発見しました。
  • 今後、局在-遍歴転移に着目した高温超伝導物質開発の指針となります。

 岡山大学大学院自然科学研究科(理)の鄭国慶教授、川崎慎司准教授らの研究グループは、重い電子系の超伝導物質において、「局在-遍歴転移」の観測に成功しました。さらに、この転移によって不純物散乱に強い超伝導が出現することを突き止めました。本研究成果は8月27日英国時間10:00(日本時間18:00)、英科学誌「Communications Physics」に掲載されました。(オープンアクセス)。
 セリウム(Ce)など希土類元素を含む化合物に「重い電子系」と呼ばれる物質群があります。重い電子系は、Ceの電子が①局在し磁性を示す、②遍歴して「重い電子」超伝導となる、という二面性を持ちます。特に重い電子超伝導は、銅酸化物高温超伝導と類似点が多く、高温超伝導発現機構の原型物質として40年に渡って研究されてきました。2000年代は、重い電子が生まれる過程(局在-遍歴転移)が論争の中心となりましたが、局在-遍歴転移は観測が難しく、共通理解は得られていませんでした。局在-遍歴転移の観測に成功した本研究成果は重い電子超伝導発現機構を考える上で重要な手がかりを与え、今後の高温超伝導物質開発にも生かされることが期待されます。

(左)CeRh0.5Ir0.5In5の結晶構造。(右)本研究で得られた圧力―温度相図。絶対零度で反強磁性が消失する点が磁気量子臨界点。Ceの電子の局在、遍歴のイメージ。本研究で局在-遍歴転移線(星印)を新たに発見。局在-遍歴転移は磁気量子臨界点より前に生じ

 

◆研究者からのひとこと

  川崎准教授

本研究は、極低温高圧下という心身の苦労が絶えない実験を10年以上積み重ねて得られた成果です。国内外のたくさんの方々に共同研究などでお世話になりましたが、特に実験室で昼夜を問わず苦楽を共にした当研究室の4名の卒業生に感謝です。

■論文情報

論 文 名:Localized-to-itinerant transition preceding antiferromagnetic quantum critical point and gapless superconductivity in CeRh0.5Ir0.5In5

掲 載 紙:Communications Physics

著  者:Shinji Kawasaki, Toshihide Oka, Akira Sorime, Yuji Kogame, Kazuhiro Uemoto, Kazuaki Matano, Jing Guo, Shu Cai, Liling Sun, John L. Sarrao, Joe D. Thompson, & Guo-qing Zheng

D O I:10.1038/s42005-020-00418-x

U R L:https://www.nature.com/commsphys/[New window]

 

<岡山大学の関連ホームページ>
 不純物散乱に強い未知の超伝導を新たに発見

(20.08.27)